急性冠症候群は不安定プラーク破綻により起こる

投稿日: 2012/01/04. カテゴリー: 循環器 |

ACS は粥腫破裂により血栓が形成され、冠動脈血流が減少または閉塞して起こる。
ACS は独立した疾患名ではなく、臨床的には不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓突然死などを包括した症候群である。
元来、狭心症や心筋梗塞などの疾患は冠動脈の粥腫による硬化 (粥状硬化) を基盤として発生し、粥腫の増大につれ冠動脈の血管内腔が徐々に狭くなり、内腔が75%以上狭窄すると労作性狭心症が起こり、さらに粥腫が増大し冠動脈内腔がほぼ閉塞したとき初めて不安定狭心症や急性心筋梗塞が発症すると考えられていた。
しかし近年、冠動脈狭窄が75%未満の病変であっても、またさらには冠動脈造影で軽度狭窄しかないと判定された部位でも粥腫が破れ、血栓による閉塞が起こり、その結果 ACS が発症することが判明した。

粥腫は血管内腔に面した内膜直下に蓄積する。粥腫が形成されると血管は血流を維持しようとして粥腫を血管の外側に押しやり血管自体が外方に拡大することで血管内腔を狭窄から守ろうとします。
その結果血管内腔は狭窄せずに血管を外方に引き伸ばすような形状で粥腫が溜まりこむことがある。
この血管の形状変化をリモデリングと呼ぶ。
リモデリングの結果、冠動脈造 (CAG) を施行しても、かりに粥腫があったとしても、外方に拡大した血管内腔の有意な狭窄が認められず、正常冠動脈か軽度狭窄の冠動脈と判定されてしまうことがある。
CAG は血液が流れる部分を造影剤が通るこちにより評価・撮影されるため、血液の流れが正常であれば狭窄度なし、と判定される。

不安定プラークの病理。
プラークには「血栓を起こしにくい = 破裂しにくい」安定プラークと「血栓を起こしやすい = 破れにくい」不安定プラークが存在する。
ACS を発症する危険性のある粥腫は「不安定化プラーク」である。安定プラークではプラークが線維性被膜に覆われているのに対して、不安定プラークでは線維性被膜が存在しないかきわめて薄い膜で、脂質コアが血管内腔に接して存在する。
不安定プラークでは、マクロファージ (組織球) や平滑筋細胞、炎症細胞 (リンパ球など) の細胞が存在する。
これらの細胞から種々の物質が分泌されている。
この作用により平滑筋細胞の細胞死 (アポトーシス) が起こり細胞数が減少し、また蛋白分解酵素の作用により繊維性被膜も分解され、薄くなる。
また、血管内腔の裏打ちをしている内皮細胞の機能も低下し、酸化 LDL の侵入や凝固機能の活性化の抑止効果が低下するとされる。

高危険群のプラークの画像:Imaging of high-risk plaque. Nemirovsky D. Cardiology. 2003;100(4):160-75. アブストラクトpdf
高危険度で、不安定 vulnerable なプラークは、破綻しやすく、血栓を形成しやすい。この機序を急性冠症候群 (ACS) と呼ぶ。 
現在、様々な侵襲的検査で不安定プラークの検査を行い、血管内エコー、冠動脈内スコープなどが、非侵襲的検査には冠動脈断層写真、MRI、エコーなどがある。

病態。
不安定プラークは炎症細胞浸潤を認める。
これらは主に単球・マクロファージ、ある種の T 細胞、そして好中球である。
変化、修飾させた LDL を注入すると、マクロファージは泡沫細胞に変化する。
*マクロファージが脂質成分を貪食すると細胞質が淡明化し、膨化し、泡状に見えることから泡沫細胞と呼ぶ。
泡沫細胞は種々の炎症性サイトカインや蛋白分解酵素を放出する。これらがフィブリン・キャップを肥厚させる。
脂質を豊富に貪食した泡沫細胞は続いて死に至り、これらが壊死の中心部を増大させる。

引用元: 感染症の病理学的考え方 : 急性冠症候群は不安定プラーク破綻により起こる.

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